田中成道の日記

田中成道の日々の日記です。

会社

今日は第二土曜で仕事は昼まで。しかし今日に限って珍しく一人で残業をする事になりました。
っていっても仕事はすぐ終わり、二時には片付けて工場を出たその時、
「おい、にーちゃん」

工場内は僕一人のはず。来訪者があるとしても運送屋くらいなわけで、にーちゃん呼ばわりなどされたことなどないのだが。
僕に近寄って来た男はジャージ姿、年は30〜40、顔は吉田○作似の男前。だがしかし、歩き方や喋り方がどうみてもヤ○ザなのである。
「おい、専務おるか?」
いない。僕一人です。
「明日この村でなー祭りがあってなー。寄付金を貰いに来たんや」
男は環境美化委員と名乗った。男からは酒の匂いがする。
そして男は急にしゃがみ、地元のコンクリートの上の石や砂を手で払い、平らなコンクリートをいきなり殴った。
こぶしからは血が流れ出てきた。
僕はなんとなく展開が読めた。
「こんなんしても痛み感じんへんねん」
そして
「体見てみるか?」
Tシャツをめくると体に無数の傷跡があり、腕にもいっぱいあった、どれも切り傷のようだ。
「痛み感じへんねん」
目つきがおかしい。
この男は足が悪いのかおかしな歩き方をする。隙をみて逃げようと思えば逃げれるのだがまだ工場の戸締りしてないので帰れない。
専務がいないのでと言っても聞かないし、あげくのはてに
「この工場のカーボンのせいでまわりの木、真っ黒やんけ。いつでも営業停止に出来るのにわしらが黙っちゃっとうおかげで会社潰れんで済んどんやど」
金を払わないと会社潰すというのは脅迫ではないでしょうか?
僕に言われても・・・・てかんじもするが会社には僕しかいないし、専務に電話してもワケわからないだろうし・・・・
とりあえず専務に言付けるという事で名前、連絡先を書いてもらうために事務所に移動。男の手からは血が流れ続けてたので消毒液とバンソーコーだけで応急処置をすると男は少し照れくさそうに笑った。
この行動で気を許したのか男の行動は思わぬ方向にエスカレートしてゆく。
「おっちゃんの右腕見てみ。細いやろ? おっちゃん気功使えんねん。気功で腕太くしたるわ。」
男の息が荒くなってくる。気を右腕に集めてるらしい。
僕は言葉が出ません。何でここにいるんだろう。
「ハア・・・・ハア・・・・な? 腕太うなったやろ?」
「はい」
「これが気功や」
いやいや。太くなったのか分かりませんでした。しかし男からは只ならぬ雰囲気を感じ取れる。------早く帰りたい-------
僕も僕です。
「すごい・・・・・」
反応求められると答えてしまう。僕の対応がさらに男をいい気にさせた。
「構えてみ」
嫌な予感がします。言われるまま僕は構えました。
案の定男は殴ってきたのです。僕も一応は昔少しだけ少林寺をしてました。受けは出来ます。ましてや相手は酔ってるし。
受けた!
すると男は
「寸止めや。今のほんまやったら当たっとったで」
ムッ
何がしたいんやろ?
「今度はおっちゃんが受けるわ」
いやいや、怖くて出来ません。もしも殴ってしまったらキレるだろうな。
帰ってください・・・・・

「たばこ持っとるか?」
「外に・・車にあります。」
「んなら外で喋ろか」
よし、僕はすばやくタイムカードを押し、戸締りし帰る準備をすませた。
男は外では自分の話をし始めた。娘の話。自分が以前ヤ○ザだった話。
そして最後に
「専務に伝えとけよ」
というと。男の乗ってきた原付の方に男は歩いていく・・・・・
やった!帰って行く。
とりあえず僕はその場で見送る。
その男が何者かも、言ってる事が本当かどうか分からないが何かあれば会社に影響があるかもしれないんです。気を使います。


「ごらぁ〜!」
男の叫び声が聞こえる。行ってみると会社入り口に運送屋のトラックが停まっており、男の原付が出れません。
「通れんだろが!」
男は激怒して叫ぶ。
僕はすぐに間に入る。運送屋が帰ったあとまた暫く男はいました。結局帰ってくれましたが。
一時間ばかし男とすごしてたみたいです。もう三時ですよ。